お殿様との出会い 第参話 主君との対面の時 (前)

弥生十八日。

この日は久屋大通公園で名古屋旅祭りが行われた。

その日どの武将様が出陣するのか、

前日まで情報は抜かりなくチェックしていた。

 

–いよいよ、会える。

 

この時、私の鼓動はとても高鳴っていた。

 

そして遂にやって来た演武の時間。

 

音楽に合わせ、三人の武将様とお供をする二人の陣笠さんが舞台に姿を現す。

 

右側に漆黒の甲冑を纏いその上から金と黒の陣羽織を羽織って頭には烏帽子をつけた武将様がいた。

–以前城でお会いした家康様だ。

 

左側には金の甲冑を纏い少し癖がある髷を結い槍を持ちとても綺麗な顔立ちをした武将様。

–槍を持っている。となるとあの方は前田利家様だ。

前田利家様は動画でしか見たことがなく、肉眼で見るのは初めてだった。

その2人の武将様に挟まれる形で、真ん中にある1人の武将様が立っていた。

 

髷を結い、全身銀色の甲冑を身にまとい、その上から黒いマントを着けその人が演武で激しく動くとその人が着けているマントがまるで生きているかのように翻る。

 

–あの人が、信長様。

 

これが、私が初めて信長様を目にした瞬間だった。

 

気づいたら演武に釘付けになっていた。

 

この演武の時、胸に刺さった言葉があった。

 

–この国に、夢はあるか。

この国に、情熱はあるか。

この国に、熱き心はあるか。

故に、我らは蘇る。

この苦しき時を、共に。

歩むために。

 

この言葉が耳に入ってきた時、

物凄く胸に響き、心を揺り動かされた。

 

翌日、弥生十九日。

前日の興奮が冷めやらぬまま、

私は名古屋城へと赴いた。

幼少の頃から憧れ続けた

あの方と対面を果たすために。

 

東門から入ってすぐ、

演武会場の二の丸広場へと向かった。

それぞれの武将(様)の家紋が描かれた陣幕が掛けられその前に人だかりができ、音楽が流れ続けている。

 

–まるで戦場のようだ。

  

そして、演武が始まるのを待つこと数分。

遠くから拍子木の音と太鼓の音が聞こえた。

 

–ドン、ドン

–カン、カン。

 

その太鼓と拍子木の音は何度も繰り返され、

二の丸広場に近づくたび大きくなってくる。

 

–来た。

 

昨日同様、わたしの鼓動は高鳴っていた。

 

その時、スタッフさんだろうか。

二の丸広場の真ん中に立って案内を始めた。

 

「お待たせいたしました。

演武開始時間が近づいて参りましたので観覧席の方へご案内をさせていただきます。まず優先順位として、小さいお子様、小さいお子様をお連れの親御様、車椅子の方、ご年配の方、ケガをされている方、妊娠中の方で座ってもしくはしゃがんでパフォーマンスをご覧いただける方を優先的に前にご案内させていただきます」

 

–なるほど。小さなお子や車椅子の方や年配の方を優先的に。此処にはそんなルールがあるのか。

 

次にそれ以外の方でパフォーマンスを座ってもしくはしゃがんでご覧いただける方の案内があったのでわたしは前に進み自前のレジャーシートを出してその場に敷いて座った。

 

次に立ち見の案内がありスタッフさんの席案内はそこで終わった。

 

静寂。

 

陣幕の後ろから、

はっ!と威勢のいい声が聞こえ拍子木を叩く音がする。

 

その後に聞こえた、野太く低く透き通った声。

 

「皆の者、こたびはよう参った。

これよりは名古屋おもてなし武将隊

演武の刻ぞ!」

 

「こたびの出陣は織田信長殿、徳川家康

前田利家殿」

 

「共は足軽陣笠隊、一之助、なつ」

 

「われらの演武は15分程。

演武の最後には写真撮影もございますゆえ、

最後までお楽しみくださいませ」

 

「演武の開始に際しまして、鬨の声を上げて参ります。織田信長様が、いざ出陣!と申しましたら皆様、おー!と声を上げてくださいませ」

 

「皆の者拳を掲げよ。参るぞ!いざ、出陣!」

 

「「「「「おーーー!!」」」」」

 

法螺貝の音が鳴り響き、

陣幕から陣笠を被った足軽の人たちが登場する。

 

–なるほど。武将様が登場する前にこうして登場することで場をあたためて盛り上げているのか。

 

こうして陣笠さんによる前説は進められていき、いよいよ武将様が登場する時。

 

「我ら名古屋おもてなし武将隊は、戦国の世より蘇りし武士集団。本日は現世という戦国の世を生きる皆様方にたくさんの元気と!

ありったけの勇気を!誠心誠意お届けする所存でございますー!」

 

再び、法螺貝の音が鳴り響く。

 

「世は泰平なれど、その暮らし楽にあらず。

民は必死に生きております。 その様は400年前、戦国の世と何も変わりませぬ。

故に!方々は蘇る!」

 

陣幕から、3人の武将様が登場する。

真ん中に、黒いマントを着けた御仁。

 

–信長様。昨日と迫力が違う。

なんだろう、物凄い圧を感じる。

  

持っていたカメラを構えたが、

威圧感が凄くシャッターを押すことができない。

 

–なんだ、これ…。

 

目の前で繰り広げられる殺陣と舞。

 

この二の丸広場だけ、時空が歪んでいる。

まるで現代であって現代でない、

戦国時代にタイムスリップしたような感覚。

 

殺陣や舞を披露したのち、彼らはお辞儀をし

観客からは盛大な拍手が送られる。

その後トークが繰り広げられた。 

利家様が観客に向かって

「今日初めて我らを見た、

という者はおるか?」と問いかける。

 

私も恐る恐る手を挙げる。

と、その背後から信長様が

「今まで何をしておった?」と言いながら刀を鞘から抜こうとする。

 

–本当に刀抜いた…!

 

それを「信長殿!やめてくだされ!」と

必死で止める家康様。

 

家「今ここにいる民を斬ってしまったらこの場が血の海と化してしまいまする」 

信「顔は覚えたぞ」

利 「お館様。我らが何者なのか、わしが説明いたしまする」と利家様が自分らが何者で誰なのかを説明する。

 

そこからまた面白おかしいトークが繰り広げられる。

 

–なんだ、なんなんだ。この人たちは。

そのトークが一通り終わった後、

信長様が口を開いた。

 

「これよりは主らの記憶だけでなく、記録にも我らの姿を収めて欲しい。ということで、

写真撮影会じゃーっ!」

「いよーっ!」と家康様が合いの手をあげる。

 

先ほど場をあたためてくれた2人の陣笠さんが写真撮影用の陣幕を持って登場し、

それを広げた。

「我らが主らに届けたき言葉はこちらじゃ。

どどん!ようこそ名古屋へ!」

「よう参ったーっ!」と大いに盛り上がる。

 

そして、正面、右側、左側と三方向に動きながら写真を撮影する。

 

–この人たち、ただ名古屋城にいて演武するだけじゃないんだ…。

 

しかしこの写真撮影会が終わった後、さらに驚く出来事が待っていたのである…。

 

 

 

お殿様との出会い 第弍話 後編 信長様の元に辿り着くまで

如月十日。

 

この日は今でも覚えている。

初めて武将隊に会ってみたい、と思って名古屋城に赴いた日。

 

何の事前情報も入れずにお城へ向かった。

この日は平日で、演武のない普通のおもてなし日だった。

私の家臣としての道はここから始まった。

最初にお会いしたのは徳川家康様。

言わずもがな、名古屋城の築城者だ。

 

この時お供をしていた陣笠さんから瓦版を一つ頂いた。

蒼空の下、名城の天守閣をバックに十人がそれぞれの面持ちでわたしを見据えていた。

 

−かっこいい。これが名古屋おもてなし武将隊か。

 その瓦版には武将隊が日々行っている様々な活動、メンバーの紹介、三英傑所縁の史跡等が載っていた。

 

 −ラジオもやってるのか、この人たち。

 

そのラジオは以前聴いたことがあったが、

本格的に聴くようになったのはこの数日後のこと。

 

そして武将隊を見に名古屋城へ行ってから八日後の如月十八日。

遂に私は辿り着いた。

あの黒いマントを纏った御仁に。

 

然し乍ら、その人と対面するまでにはまだ一月という時間を要した…。

 

 

 

 

 

お殿様との出会い 第弍話 前編 まだ見ぬ人

二◯一七年如月。

 

睦月の終わりから、

私はある人たちに興味を持ち始め、

その人たちが非常に気になっていた。

 

名古屋おもてなし武将隊

 

以前から存在と名前だけは知っていたが、

どんな活動をしているのかはこの時はまだ知らなかった。

"名古屋城にいつもいる人たち"という認識しかなかったのである。

 

「本物に、会ってみたい」

 

いつしかそういう思いが生まれていた。

 

この時はまだ、特にどの武将(様)が好きで会いに行きたいという考えはどこにもなかった。

それがいつからだろう。

 

あの黒いマントを纏った御仁に魅かれていったのは。

 

 

 

 

お殿様との出会い 第壱話 失った物

2017年も残すところあと10日。

 

少しずつではあるが今年を振り返っていきたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…遡ること一年前、

二〇一六年師走三十一日夜。

ラジオから流れた五大老の大将NKIさんの最後の絶叫を聴いた後、むせび泣きながら年を越した。

–ここで私の青春は終わった。

 

 

一夜明け、二〇一七年睦月一日。

五大老が消えた、という悲しみを抱えながら正月を過ごしていた。

心が空っぽになった。

 

 –もう心の底から笑うことはできまい。

そう思っていた。

 

 

 

 

あの方たちと出会うまでは。

 

 

 

 

 

 

心の奥底でくすぶるもの〜絆2017 天の焔 を観て〜

f:id:Nob_snb:20171029125412j:image
ずっと観たかった絆2017 「天の焔」
遂に円盤を購入した。

名古屋おもてなし武将隊の御大将であり
私が敬愛してやまない主君、
織田信長様の生涯を描いたこの舞台。

本編を観た感想…。
震えた。涙が止まらなかった。
関ヶ原の戦いの場面から始まり、
名古屋城を築城の最中にある陣笠2人
(とまさんと、今はもういない章右衛門さん)に
清正様が利家様から聞いた信長様の話を語って聴かせる…、といった内容。
この、
過去(信長様の時代)と現在(清正様の時代)が
時折繋がり合う…。
この物語の奥深さに、壮大さを感じた。

信長様が掲げた「天下布武」の本当の意味。
七徳の武。

暴を禁じ
兵を戢め
大を保ち
功を定め
民を安らかにし
衆を和ませ
財を豊かにする

私も劇中の章右衛門さんと同じで、
天下布武の意味は武力を持って天下を統一することだと思っていた。

しかしそれは違った。
信長様はこの世から戦をなくそうとした。
民が平和で安らかに暮らせる世を作るために。

1番印象的だったのは、
信長様となつさんが語り合う場面。
なつさんの叫び、嘆きに信長様が心を痛め、
なつさんに謝る姿、あの表情。
今まで見たことがなかった。

あれが…、真の信長様の姿なのかもと、
円盤を観ながら思った。

最後の本能寺から、そして孤独な生涯から、
九名が現れ信長様を救った場面。

「あなた様の夢こそ、我らが夢。
共に担がせてくださいませ。」


…涙なしでは見られない。


名古屋おもてなし武将隊の存在を、舐めてた。
あの方々は真の、本当の武士だ。


信長様、カッコ良すぎ…。
武将隊、カッコ良すぎ…。

出会えて、良かった。

 

 

 

名古屋まつり〜信長様の言葉〜

昨日の名古屋まつりでの、最後の信長様の言葉。


「400年前、天下を泰平にするために儂らは戦ってきた。そしてこの景色を見るために、
我らは蘇った。
この景色を見せてくれたことを、
本当に嬉しく思う」と。

記憶が曖昧なのでちょっとニュアンス違うけど…。
凄く胸を打たれて、心に沁みた。
城の夏祭りでも思ったけど、
あの織田信長(様)が戦のない時代に蘇り、
この戦のない泰平の世、すなわち現世を謳歌し
戦もなく誰も傷つけず生きてゆける世になったことに喜びを感じているのではないかと…、
わたしは思った。

そして更に思ったことがもうひとつ。
名古屋まつりで全国の武将隊がひとつの舞台に立ち並ぶ姿を見て、やはり信長様は戦国の世でもそうだったかもしれないけれど、
現世に蘇っても全国で日々戦っている武将様や武将隊の先頭に立ち皆を牽引していくリーダーなんだなと…。あの時強く感じた。

過去を生きた人が現代に蘇って
"いま"を生きている。
これが、武将隊文化…。

 

武将隊文化って、凄いね。

 

 

普通に

やっとかめに更新。

9月で武将隊の家臣になって、半年が経った。

半年経って、色々考えてる。

 

…自分の応援の仕方を。

 …本当に、このままでいいのかと。

武将隊は観光PRが主目的だ。

 いわば星の小町(アイドル)とは違う。

 

だから時折、迷ってしまう。

悩んでしまう。

お城に何度か通ってきたけれど、「これしてもいいのかな」とか、

日々頑張っている方々の邪魔になっていないか、

なにか迷惑かけなかったか…。

お城に行く度に、振り返っては考える。

 

おもてなし列で思うようにお話できなくてもいい。

一定の距離を保ったほうが、応援しやすい。

 

こうして悩んで考え込んでいるけれど、

あの方々を好きなのは変わりはない。

これからも応援していきたい。

普通に、ライトに。

 

 ただ、それだけ。